環 境 保 全
養殖漁場の海底環境保全
「付着物防御」
海底の自浄能力を超えない付着物沈降
従来の海棲生物付着(藻類・イガイ・フジツボ・ザラボヤなど)の事前防御技術は、主に忌避剤(重金属)を使用した化学的な付着阻害で、水質・底質汚染を招きやすいことが問題でした。本製品はシリコンの撥水性に着目・活用し、溶出や沈殿がほとんどない、物理的な付着防止効果を利用した環境負荷のすくない、安心・安全な技術です。(次世代型の付着物防御概念=ファウルリリース) 従来の忌避剤タイプの付着阻害剤は、薬剤が消耗すると海棲生物が付着しはじめますが、本製品を使用すると、塗布面の撥水性により生物の付着強度が低下する為、海棲生物は塗布面への付着と自重による剥離・落下を繰り返し、長期防汚効果が期待できます。養殖漁場では、付着物が一度にかつ大量に落下沈殿する場面※が度々あります。その際、急激な有機物負荷が局所的にかかるため、自浄能力を超過して漁場環境の悪化につながるといわれています。本製品を使用すると、自浄能力を超えない程度で連続的におだやかな付着生物の沈降を促進し、良好な漁場環境を維持する仕組みになっています。
※特に夏場の高水温(28℃~)による付着生物(イガイ)の大量斃死や、付着物の物理的除去による付着物の落下・沈殿など
※ 養殖実務において洋上浮体構造物への付着物除去は必須要件
未処理筏
未処理筏
藻類付着
フジツボ固着
「付着物対策」➡ 「除去作業省力化」と「攻めの環境保全」
「海洋生物の付着防止器具」
〇「防汚フロートカバー」防汚塗装と同様の付着防止効果(環境負荷を掛けない長期間の付着物防御と洋上での簡易脱着が可能)
防汚フロートカバー 設置筏
防汚フロートカバー 設置筏
藻類付着 成長と共に剥離
付着と剥離を繰返す
※ 長崎県「新事業分野の開拓を図るものについての認定」(地方自治法施工規則第12条の3の2の第1項の規則に基づく認定)-2011
〇「防汚養殖ネット 」潜砂基質を必要としない養殖器 (垂下システム重量軽減と収容力増加 垂下養殖・増殖礁ネット)
垂下養殖用ネット
60日経過
増殖礁用ネット
増殖用母貝ネット
「タイラギを垂下養殖するための養殖用器具」
〇「防汚オレンジ篭」 タイラギの垂下養殖システム(底面付着器+防汚食害防止ネット)タイラギ中間育成用
未防汚処理 60日
水洗処理 フジツボ固着
防汚処理 60日
水洗処理 フジツボ痕無
【知財情況】
「海洋生物の付着防御用器具」特許第5521154号 国立研究開発法人 水産総合研究センター
「タイラギを垂下養殖するための養殖用器具」特許第5288546号 国立研究開発法人 水産総合研究センター
※「特許実施許諾契約」を締結し商品化 販売中 2012~
産業廃棄物減量技術
「貝殻重量減量」
※ 目的-可食部分の占有比率を確保し、不要な貝殻重量を軽減する技術
自然界で貝殻が厚くなる原因
・ポリキータ(穿孔性多毛類)の貝殻への侵入による防御反応
マガキシングルシードへのポリキータ侵入例
マガキシングル侵入痕
真珠質包埋による治癒痕
穿孔し侵入直後
ポリキータ成体
通常、ポリキータ浮遊幼生の着底穿孔は、外殻外側の稜柱層が防御しているが、稜柱層が物理的に摩耗剥離していると穿孔侵入が容易になり、貝殻を通過して内部組織に直接影響を及ぼす。穿孔性の生物に対しては外套膜から直接真珠質を分泌し、侵入痕を巻き込んで防御がおこなわれる。特に直接貝殻と接している閉殻筋部位は、貝殻との間に外套膜が無い為に穿孔に弱い。ポリキータ侵入時期に、水温・餌料環境が良好な時期は肉質充実より先に貝殻が厚くなる傾向が強い事が確認されている。
・貝殻接合部位の損傷破損部からの殻体内部へのヘドロ流入沈殿による治癒痕
くい打ち式の干出漁場において、台風の後、底質がヘドロ状の場合多く見られるブリスター症状
ポリキータ侵入とは異なり、硬質コンテナ飼育は台風被害により貝殻接合部位の損傷破損部から、貝殻と外套膜の間の殻体内部へ、短期的に懸濁した底質成分が大量侵入し、殻底部に堆積し、大きな治癒痕が形成される事が多く、形成される治癒痕は薄く、割れると外部の有機質を含んでいる事が多い為か異臭を放つ場合が多く、生食用の殻付き牡蠣としての販売は困難となる
ポリキータ駆除の「有」vs「無」の貝殻断面「殻厚」の比較
駆除(淡水+濃塩水処理:浸透圧差で駆除)貝
全重:60g・殻:35g・肉:20g・水5g・ 殻厚3㎜
ポリキータ(穿孔性多毛類)侵入痕のある貝
全重:100g・殻:65g・肉:20g・水15g・ 殻厚10㎜
極端に貝殻が薄い原因は、外観が同一サイズに至るまでの育成期間が約半分で、当然、貝殻の積層も薄くなる。加えて、シリコン系塗料で防汚処理、収容網篭の網目を細くする事で篭内におけるフジツボ幼生の好適付着流速をコントロールし、貝殻表面への着底付着を阻害、穿孔性多毛類(ポリキータ)も収容器ごと浸透圧差による駆除が可能となり、貝殻が薄くなったと推察される。
収容器を揺らす事で内部の貝同士を擦り合わせて付着物を防御する事の弊害
カキは左殻側で基質に付着する為、外部表面となる右殻表面の稜柱層には付着物に対する防御効果を有している。篭の中で貝を揺らす事で表面に付着した付着物を除去する場合、荒天により過剰な擦り合わせで稜柱層を剥離すると、穿孔性の生物が侵入し易くなり、養殖環境によっては侵入生物による弊害が高い確率で発生する。
〇「物理的な殻体の成長を抑制する方式」
揺れる収容内での供擦り効果による殻体外部の付着物抑制+深いカップの外観形成+身入りの充実
※ 収容器内の付着物防御対策と自然界における成長時期の殻体形成阻害を混在
〇「自然界同様に殻体の成長を優先する方式」
育成初期のFLUPSY導入によりリンペン成長を抑制➡沖出し収容器内におけるフジツボキプリス幼生(付着環境に選択性の有る)の好適付着流速のコントロールし、貝殻表面への着底付着を阻害(収容網篭の網目を細くする事で通水阻害しない様にシリコン系塗料で防汚処理)+自然界同様に成長度の高い中間育生期のリンペンを伸し、後の殻体成長促進に繋げる(環境差による成長促進)➡餌料環境の格差操作による可食部分の肥育
※ 収容器内の付着物防御を別に構築、自然界における成長時期の殻体形成を優先
(シングルシード種苗+防汚篭育成+ポリキータの淡水駆除)
貝殻重量の全重比率(%)の比較
「駆除無し区」 養殖期間12ヵ月(早期採苗4/15 ➡ 翌年4/15剥身)
全重量(126g)
貝殻重量(66g)52%
可食部分(25g)身入度20%
「浸透圧駆除区」 養殖期間10ヵ月(通常採苗6/15 ➡ 4/15剥身)
全重量(99g)
貝殻重量(46g)46%
可食部重量(31g)身入度30%
従来のカルチ採苗天然マガキ養殖において、目標となる20g前後の可食部分を得る為の貝殻を含めた全重量は約100g前後であった。シングルシード人工採苗貝の養殖において、防汚篭育成と虫駆除を組み合わせると、貝殻を含めた全重量は約60g前後で、20gの可食部分を得る事が可能となった。貝の全重量は40%以上軽く、軽減重量の殆どが貝殻重量である事が判る。
薬剤を使用しない、濃塩水と淡水の浸透圧差のみを利用した「環境保全型」の駆除技術
対処法
種苗段階
マガキ カルチ採苗器 淡水処理(淡水全換水orかけ流し 1時間)500L 30連×10本
養殖段階
淡水 ➡ 濃塩水 ➡ 淡水 浸漬、より大きな浸透圧差を作り出し、短時間で駆除効果を高める
環境保全型養殖技術の講演資料
「物理的海棲生物付着防止塗料を活用した環境保全型養殖技術の展開」
養殖水産物国際流通化時代へ対応技術
平成28年1月26日
「環境イノベーションフォーラム in 鹿児島」
主催:九州経済産業局